「この業務、もう少し楽にならないだろうか」。日々の診療に加えて、書類の作成や転記、報告といった定型業務に追われている医療機関は少なくありません。RPA(Robotic Process Automation)は、こうした定型業務を自動化する仕組みです。本記事では、医療機関の院長・事務長の方に向けて、RPAの基本的な仕組み、クリニックや病院で自動化できる業務の例、生成AIと組み合わせた活用、導入前に押さえておきたい点をご説明します。
※本記事は、医療機関向けにRPAの導入・開発・運用支援とAIサービス「MS-AI」を提供する株式会社MedSync(メドシンク)が執筆しています。記載の内容は2026年9月時点のものです。
RPAとは?医療機関の定型業務を自動化する仕組み
RPA(Robotic Process Automation)とは、人がパソコン上で繰り返し行っている定型的な作業を、ソフトウェアの「ロボット」が代わりに処理する仕組みです。あらかじめ操作の手順を登録しておくと、ロボットがその手順どおりにアプリケーションを操作し、データの転記や帳票の作成、チェックなどを自動で行います。
RPAが得意とするのは、次のような作業です。
- アプリケーションやツールの操作
- 外部システムとの連携・処理
- 院内システム同士の接続・統合
- Web上の情報収集
- データの加工・整形・統合
- チェック・検証業務
RPAの特徴は、決まったルールで繰り返す作業に強いことです。決して万能ではありませんが、医療現場に共通する多くの定型業務を代行できるツールです。
企業から医療現場へ広がった自動化の波
RPAという言葉が広く知られるようになったのは、2010年代半ばのことです。もともとは金融・物流・製造など、業務量の多い大手企業の間で、人手による反復作業を減らす目的で導入が進みました。当初のRPAは専門のIT部門を持つ大企業向けのもので、導入には専門的な技術と費用を要しましたが、近年は技術の発展に伴って導入コストが下がり、必要とされる専門知識も以前ほど高度ではなくなりました。医療業界では2020年を過ぎた頃から大きな病院を中心に導入が始まり、現在では中小規模のクリニックや医療機関にも少しずつ広がってきています。
クリニック・病院でRPAが求められる背景
クリニックや病院では、診療そのものに加えて、レセプト処理、予約対応、書類の作成、関係機関への送付、日々の報告など、多くの定型業務が発生します。「作業ミスが思わぬトラブルにつながる」「スタッフの残業が増えている」「人手が足りず、新しい取り組みに踏み出せない」。こうしたお悩みは、MedSyncがこれまで関わってきたクリニックでも繰り返し伺ってきました。
これらは、患者さんの診療に直接関わらない一方で、欠かすことのできない重要な業務です。定型業務をRPAに任せることで、次のような効果が期待できます。
- スタッフの作業負担の軽減
- 転記ミス・入力漏れといったヒューマンエラーの抑制
- 時間外に残って処理していた作業の削減
こうして生まれた時間を、患者さんへの対応や、人の判断を必要とする業務に充てられるようになります。これは単なる業務効率化にとどまらず、医療現場の働きやすさにもつながる変化です。
医療現場でRPAが自動化できる業務の例
RPAは、毎日・毎月・毎回同じ操作を繰り返す作業を正確に処理できます。以下に、MedSyncが自動化に取り組んできた業務の例をご紹介します。
例1 居宅療養管理指導書の作成・送付を自動化
居宅療養管理指導書とは、在宅で療養している患者さんのもとを医師や薬剤師などの医療職が訪問し、診療や指導を行った内容を、患者さんご本人やご家族、ケアマネジャー、看護師などの関係者に共有するための文書です。
この指導書は訪問ごとに作成し、カルテの一部を抜粋したうえで関係機関へ送付します。作成には1件あたり約3分を要し、例えば、1日の訪問件数が20〜30件の場合、作成作業だけで最大90分ほどかかることもあります。在宅診療を行うクリニックにとっては、毎日積み重なる作業負担です。
RPAを導入すると、電子カルテから必要な情報を取得し、所定の書式に差し込んで指導書の下書きを作るところまでをロボットが代行します。医師が内容を確認・修正し、その確認を経てから、PDFの作成と関係機関への送付をロボットが行います。医師の作業は、下書きの確認と修正に絞られます。
MedSyncが支援した在宅診療クリニック1施設では、担当者への聞き取りに基づき、作業時間が月40時間相当から月4時間相当へ約9割削減されたと推定しています。
※1施設での例です。実測値ではなく聞き取りに基づく推定値であり、効果は訪問件数や運用体制によって異なります。
例2 訪問看護指示書・薬剤指示書の作成
訪問看護指示書の作成には対応済みです。薬剤指示書への対応は、引き続き進めています。
訪問看護指示書とは、主治医が訪問看護ステーションに対して、患者さんへの看護内容や頻度などを指示する文書です。病状や必要な処置が記載されており、訪問看護を行うために欠かせない書類です。看護師は、指示書に記載された内容と有効期間に基づいてケアを行います。
薬剤指示書とは、主治医が薬剤師に対して、患者さんへの服薬指導や薬剤管理を依頼するための文書です。在宅医療の場で、薬剤師が訪問して薬の説明や管理指導を行う際に必要で、処方内容や服薬上の注意点などが記載されています。発行の時期や手順は、医師の指示と施設の運用に応じて確認します。
いずれの指示書も1件あたりの作成時間は数分ですが、対象となる患者さんごとに定期的に作成するため、患者数の多い医療機関ではまとまった時間が必要になります。RPAは、電子カルテ上で繰り返す作成・発行の操作を代行します。医師は、発行前に作成された内容を確認・修正します。
例3 来院患者数・診療点数の集計・報告を自動化
ORCAなどのレセプト(診療報酬請求)ソフトウェアから、その日の来院患者数や診療点数の合計などを集計し、日々の記録を分析し、院内の連携ツールへレポートを送信するところまでをロボットが自動で行います。
日次の集計・報告を自動化することで、経営判断に必要な数値を定期的に確認しやすくなります。
例4 訪問看護報告書の作成を自動化(生成AIとRPAの組み合わせ)
訪問看護報告書のように、記録をもとに文章を作成する必要がある業務は、決まった手順だけでは自動化しきれません。MedSyncでは、生成AIが看護記録から報告書の下書きを作成し、RPAがシステムへの登録を行う仕組みで、訪問看護報告書の作成を自動化した例があります。作成された報告書は、看護師が内容を確認したうえで確定します。
AIとRPAの導入により、作業時間の削減に加え、文書作成・転記・送信業務の標準化と、確認漏れの抑制につながっています。
以上は、RPAで自動化できる業務の一例です。在宅データ提出加算に必要な記録の作成支援など、MedSyncが自動化を手がけてきた業務はほかにもあります。診療情報提供書の作成についても、対応を進めています。完全な自動化が難しい業務でも、一部の工程を自動化するだけで負担を減らせることは少なくありません。
RPAと生成AIの組み合わせでできること(MS-AI/M-Automate)
RPAは「決まったルールで繰り返す作業」には強い一方、文章の内容を読んで判断したり、記録を要約して文書を作成したりする作業には向いていません。近年は、RPAに生成AI(大規模言語モデル:LLM)を組み合わせることで、こうした文脈の理解や文章作成を伴う業務にも対応できるようになってきました。
MedSyncでは、RPAと生成AIを組み合わせた業務自動化を、医療機関向けAIプラットフォーム「MS-AI」を構成するサービスの一つ「M-Automate」として提供しています(2026年9月時点)。M-Automateは、AIによる情報抽出・要約・文書作成と、RPAによるシステム操作を組み合わせ、医療業務を一連の流れとして自動化します。電子カルテや業務システムから必要な情報を取得し、院内ルールに基づいて文章を作成します。作成した文章は医師や担当者が確認・修正し、確認を経たうえで、RPAが登録・出力・送付といった操作を代行します。
RPA導入支援の内容は、サービスページ「RPA導入・運用支援」をご覧ください。
MS-AIでは、対象サービスの入力情報を国内のサーバーで取り扱い、AIモデルの学習には使用しません。医療機関に求められるガイドライン(いわゆる3省2ガイドライン)に配慮した設計です。AIが作成するのは下書きです。医療従事者が内容を確認・修正し、最終的な責任を負うことを前提に運用します。
MS-AIの詳細は、「MS-AI(医療機関向けAIプラットフォーム)」のページをご覧ください。
RPA導入前に押さえておきたい3つのポイント
効果の数値は条件とあわせて見る
「作業時間を何割削減」といった数値は、対象となる業務、件数、測定方法によって大きく変わります。本記事で挙げた削減の例も、特定の施設での推定値です。導入をご検討の際は、貴院の業務量をもとに、どの業務にどの程度の効果が見込めるかを個別に整理することをおすすめします。MedSyncでは、ヒアリングの段階で、対象業務と見込まれる効果を貴院と一緒に整理します。
既存の電子カルテ・システムを活かせるかを確認する
RPAは人と同じように画面を操作するため、システム同士を接続するAPI(連携機能)を持たない電子カルテでも、自動化できる場合があります。一方で、電子カルテが院内設置型(オンプレミス)の場合や、閉じたネットワークで運用されている場合は、導入方式やネットワーク側の設定の調整が必要になることがあります。対応の可否は、導入前のヒアリングで確認します。
運用の責任者を院内で決めておく
RPAは、導入した後も、ロボットを動かし、結果を確認し、業務の変化に合わせて調整していく運用が必要です。MedSyncでは、RPAの運用責任者を医療機関側に置いていただくことを前提としており、ご契約の際にその旨を共有しています。日々の運用は院内の担当者が担い、障害対応や定期メンテナンス、稼働監視、操作に関するお問い合わせ対応は、MedSyncの保守運用サービス(別途ご契約)でお引き受けします。
MedSyncのRPA導入支援の特長
株式会社MedSync(メドシンク)は、オープン株式会社が提供するRPAツール「BizRobo!」の正規代理店として、医療機関向けのRPA導入・開発・運用支援を行っています。
RPAは「導入して終わり」の仕組みではありません。使っていく中でほかにも任せられる作業が見つかり、活用の範囲が少しずつ広がっていくツールです。
クリニックでの導入・運用経験に基づいたご提案
これまで支援してきたクリニックでの導入・運用経験をもとに、業務の重要度、ロボット開発の難易度、スタッフの皆様が使いやすいかどうかを総合的に検討します。そのうえで、開発に着手する順序を決め、スタッフの皆様に操作をご説明します。
小規模クリニックでも導入しやすい段階的な支援
RPAを運用できる人材が院内に不足している場合でも、必要に応じて段階的に支援します。ご予算に合わせて自動化する範囲を調整し、オーダーメイドで開発を行います。
現場の運用に合わせた導入後の調整・サポート
導入後も、日々の運用で生じる不具合の修正や、現場の業務に即した改善策のご提案など、保守運用のご契約のもとで継続的にサポートします。
導入計画の作成と進行管理
MedSyncはこれまで、クリニックを中心に、さまざまな技術や仕組みの導入とアフターフォローを行ってきました。RPAの導入に際しては、この経験を活かしてプロジェクト計画を策定し、導入後の効果測定と計画の見直しを行います。
RPA導入に関するよくあるご質問
小規模なクリニックでもRPAを導入できますか
はい、ご導入いただけます。小さな作業一つからでも構いません。効果の出やすい業務から段階的に始めることをおすすめしています。
RPAの運用にスタッフのIT知識は必要ですか
ロボットは現在の業務手順をそのまま再現する形で作成するため、日常の業務に合わせた操作方法で利用できるように設計します。ただし、ロボットの運用責任者を院内で決めていただく必要があります。運用に必要な操作や確認事項は、導入時にご説明します。
RPA導入の費用はどのように決まりますか
費用は、RPAツール「BizRobo!」のライセンス費用と、MedSyncによる開発・運用支援の費用で構成されます。自動化する業務の内容やご予算に合わせてプランをご提案しますので、お問い合わせください。
生成AIを使う場合、患者さんの情報は安全に扱われますか
MS-AIでは、対象サービスの入力情報を国内のサーバーで取り扱い、AIモデルの学習には使用しません。医療機関に求められるガイドラインに配慮した設計です。詳しくは「MS-AI(医療機関向けAIプラットフォーム)」のページをご覧ください。
まずは、時間のかかっている業務を整理する
RPAは、決まったルールで繰り返す定型業務を代行するツールです。万能ではありませんが、居宅療養管理指導書の作成・送付や日々の集計・報告のように、医療機関で毎日繰り返される作業の多くは自動化の対象になります。生成AIと組み合わせることで、文書作成を伴う業務にも自動化の範囲が広がっています。
「どのような技術なのか知りたい」「自院で使えるのか知りたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。MedSyncは、ツールの導入支援にとどまらず、クリニック運営のパートナーとして、同じ目線でプロジェクトを進めます。
- RPA導入支援サービスの詳細:RPA導入・運用支援
- 生成AIとの組み合わせ:MS-AI(医療機関向けAIプラットフォーム)/M-Automate
- BizRobo!正規代理店について:お知らせ「BizRobo!正規代理店としてのRPA導入・運用支援について」
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- 会社情報:株式会社MedSync(メドシンク)/導入事例
※記載の内容は2026年9月時点のものです。サービスの内容は継続的に改善しています。